「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」
このタイトルは、吹き替え版の放送にともない、つけられたタイトル。
もともとは「風起隴西」。
原題「风起陇西(fēng qǐ lǒng xī)」をそのまま起用しています。
この邦題のサブタイトル「愛と悲しみのスパイ」について思うことを伝えてみます。
なぜ、「愛と悲しみのスパイ」なのだろう
「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」このサブタイトル「愛と悲しみのスパイ」
はありか?なしか?
結論から言えば「あり」だと感じました。
このドラマが日本上陸した際、「風起隴西」というタイトルのホッとしました。
なぜなら、日本語タイトルが内容と合わないでしょ?と個人的に思うタイトルのことがたまにあるからです。
皆さん、そう思うことありませんか?
恋愛ドラマだと思って視聴し始めたら、武侠ドラマの要素が強すぎとか。
あるいは、なんだかセンスないような長いタイトルだったり。
そして、このたび吹き替え版の放送にあたり、タイトルが「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」。
これも恋愛ドラマ化?と勘違いしてしまうタイトルに感じてしまい、はじめ違和感を覚えました。
正直、残念な気持ち。
そのまま「風起隴西」でよかったのに。
ただ、「ふうきろうせい」って響きはどうも綺麗でないけれど。
「風起隴西」
隴西という土地から、歴史が動くような行動(風)が起こる。
そんな意味。
日本人には「隴西」という土地名も馴染みがないし、「風起」もわかりにくいですよね。
そういう意味ではこのタイトルでは内容がピンとこないかも知れません。
もっと感情に呼びかけるタイトルの方が日本では受け入れられるかもしれません。
そういう意味ではタイトルを「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」はありだと思うようになりました。
では、本当に「愛と悲しみ」なのか?
どう思われますか?
「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」伝えたいことは何?
「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」、原題「風起隴西」が伝えたいことは
何?
三国志と言えば、劉備や曹操、そして諸葛亮孔明といった英雄たちの物語。
でも、このドラマでは影で動くスパイたちの「情報戦」がテーマ。
歴史は、こうした無名の史実のは名前すらでてこないような人々でつくられているのかもしれない。
そんなことを思わせる内容。
無名の人々の犠牲で成り立っている、そんなことが伝わってくるドラマです。
そこに人としての「苦悩」が感じる。
任務と忠義、そして愛する人の死や裏切りに翻弄される。
それでもその感情を自由に出すことも許されない。
しかし、感情は感情。
主人公の陳恭は、愛する妻の死も目の当たりにし、思いが変化していきます。
そして荀詡との関係、お互いを大事に思っているからこその苦悩も見て取れます。
壮大な人間ドラマがここにあります。
恋愛ドラマではなく、人間としての感情に丁寧に向き合ったドラマだと思います。
第17話・18話から感じる「愛と悲しみのスパイ」
この「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」の中でキーポイントとなるのは、17話と18話だと思います。
17話「反間の計(はんかんのけい)」と18話「連環の計(かんかんのけい)」
ここで、誰が裏切り者か?
その疑念がわかってきます。
17話では陳恭の正体がわかります。
「白帝」であり「燭龍」
そして蜀のスパイでありながら、魏のスパイでもある。
しかし、この「燭龍」も陳恭が成りすましていますね。
このあたりも本当に複雑です。
「白帝(はくてい)」は蜀が魏に潜入させたスパイ。とても優秀なスパイ。
でも「街亭の戦い」で誤情報を送ったとして、裏切り者扱いされたことが物語の始まり。
そして、「燭龍(しょくりゅう)」も蜀が魏に潜入させたスパイ。
それも最高機密のスパイです。
蜀にとっては戦局を左右する白帝よりも重要な人物。
蜀の諸葛亮孔明とつながる「影のさらに影」の存在。
この二人が実は陳恭。
といっても陳恭は燭龍に成りすましていますが。
さらには魏からも利用されている立場。
利用されているというよりは利用しているのかもしれません。
父の死に対する私怨、そして街亭の戦いの敗戦の真相は何なのか?
そんな彼とひたすら真実を追い求める荀詡。
彼らの苦悩と共に17話で、これまでの疑念の種がまかれていく。
そして、18話。
疑念の種が鎖となって、連鎖していく。
人としての情や道理に揺れ動く、そして感情のままには動けない苦しさ。
そこには愛と悲しみが描かれています。
「愛」というと、男女間の恋愛感情に感じてしまう事が多いですが、ここでいう「愛」はもっと広い意味。
人としての「愛」
親子の愛であり、夫婦の絆であり、大切に思う人への情であり、国への忠誠心である「愛」。
複雑に絡み合った「愛」
しかし、「愛」だけではどうにもならない現実。
そこに「悲しみがある」
そんな風に感じる2話です。
そう思って視聴すると、「愛と悲しみのスパイ」という邦題のサブタイトルがしっくりときて納得です。
皆様はこの邦題にどのような感想をもちますか?
「反間の計」と「連環の計」
では、この2話のタイトルについて。
以前、この「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」のそれぞれの話に、中国の兵法「三十六計」使っているとお話しました。
この17話「反間の計(はんかいのけい)」
中国語では「反间计(fǎn jiàn jì)」
敵のスパイを利用して敵内部の人間関係を疑心暗鬼にさせ、仲間割れを起こさせます。
敵の仲間意識を壊し、内部争いに発展させれば戦う力は弱まりますね。
そして「連環の計(れんかんのけい)」
中国語では「连环计 (lián huán jì)」
複雑な策略を鎖のように結びつけて、適がほどくことができず、がんじがらめになってしまう。
そして逃げ道がなくなってしまう。
ひとつひとつは小さなことでも、それがつながったときには、敵はどこからどう外していけばよいのかわからなくなってしまいます。
「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」は戦場での戦いではなく、情報戦の世界。
ここに兵法をタイトルにしていることが、このドラマの深みだと感じます。
人間関係の複雑さを感じるストーリー。
信頼と裏切りの狭間で翻弄する感情表現。
それを見事に演じた俳優陣の演技にこのドラマのすごさを感じます。
そして、タイトルから読み解き視聴するのも楽しいのではないでしょうか?
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