「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」は原題『風起隴西(ふうきろうせい)』。
「隴西に風が起こる」という意味です。
この記事では「隴西」について深堀りし、ドラマの世界が少しでもわかりやすくなるよう解説していきます。
「風起隴西」の『隴西』はどこ?
隴西(ろうせい)は地名。
三国志ファンでしたら、耳にしたことがあるかもしれません。
でも、三国志がそんなに詳しくない方にしたら、地名ということもわからないですよね。
このドラマ、吹き替え版が放送するにあたり、『風起隴西(ふうきろうせい)』から「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」にタイトルが変更になりました。
確かに風起隴西では一体何の話?とタイトルだけではわからない方も多いのだと思います。
「三国志ー愛と悲しみのスパイ」となり、三国志の話なのね。三国志に詳しくない方にもわかりますね。
でも、隴西は聞きなれない地名。
『隴西』は現在の甘粛省定西市隴西県(かんしょくしょう・ていせいし・ろせいけん)です。
甘粛省(かんしゅくしょう)
定西市(ていせいし)
隴西県(ろうせいけん)
省・市・県は何でしょう?
省は日本でいう都道府県。そして、市は省の下にある大都市のようなイメージ。
日本の政令指定都市や県庁所在地みたいな感じです。
つまり、甘粛省の主要都市のひとつ。
そして、県は市のさらに下にある、日本でいる市町村みたいな感じです。
ですから、「甘粛省定西市隴西県」は、「甘粛県定西市隴西町」みたいにイメージするといいですよ。
隴西県の面積はおよそ3,000平方キロメートル。
これはに日本の東京都が2.194平方キロメートルなので、それよりは大きいけれど、中国の国土からしたら小さい。
こんな小さな土地から歴史を揺るがす風が起きたというのです。
隴西という小さな地域、これが三国志の世界では大きな意味を持っているのです。
『隴西』はどんな土地?
隴西は「黄土高原(こうどこうげん)」と呼ばれる大地です。
黄河(こうが)が運んだ細かい土(黄土)が長い年月をかけて積った場所。
シルクロード好きならよく知る河かもしれません。
黄河は中国を代表する大河、その水の勢いはすさまじいものです。
氾濫を繰り返し中国の人々を苦しめました。
黄河は中国文明の母なる河であるとともに、中国の悲しみと河とも言われています。
実際に観光で行ったことがありますが、迫力満点の勢い、そして本当に黄土色でした。
シルクロードの東端は長安、現在の西安です。
西安と言えば兵馬俑で有名ですね。
長安(西安)から西へ向かう旅人は、まず黄河を超え、隴西、河西回廊(かせいかいろ)、そして敦煌へ。
これがシルクロード東端ルートとしての王道ルートと言えます。
なんとなく「隴西」の位置がイメージできたでしょうか?
「隴西」で何が起こった?
では「三国志ー愛と悲しみのスパイ」の中で「隴西」で何が起こったのでしょうか?
「隴西」は蜀の土地?
ではありません。
隴西は魏の土地、蜀との国境に近い要地。
北伐の最前線です。
このドラマは「街亭の戦い」がスパイである陳恭の誤情報のせいではないか?
陳恭の裏切りのせいだ。
そんなスタートでしたね。
この街亭の戦いが隴西地方で起こったのです。
この街亭の戦いは蜀にとって第一次北伐。
諸葛亮孔明は天才軍師として魏にも恐れられています。
その初戦で蜀が敗北。魏が勝利した。
これは魏にとっては大きな勝利です。
つまり、魏にとってはまさに、ここから歴史を変える風が起こったのです。
魏にとっては「天下統一」の第一歩とも言えるのです。
そして、この一勝がのちに司馬懿の子孫が魏を継ぎ、天下統一の歴史に関与していきます。
ただし、この戦いではまだ司馬懿は表舞台には登場していません。
司馬懿と言えばドラマ「秘密の皇帝」に登場しています。
この「秘密の皇帝」は史実に基づきつつもかなりあり得ないでしょー。
という内容ですが、なかなか楽しいです。
そして、新しい三国志ドラマとして、三国志が身近に感じますよ。
魏にとっての街亭の戦い
三国志は魏・蜀・呉の三国がバランスをとりつつ領土を争っていました。
この「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」は魏と蜀の争い。
呉は孫権が支配しています。
隴西は魏と蜀の国境にあたり、呉は地理的に関わらない場所となります。
孫権といえば、映画「レッドクリフ」。
これも名作ですね。
まだ見ていない方、ぜひご覧ください。
そして、この「三国志外伝ー愛と悲しみのスパイ」は北伐が舞台裏です。
この第一北伐の「街亭の戦い」での魏の勝利。
これは、ただの一局の勝利ではありません。
戦は勝つこともあり、負けることもある。
でもこの一戦は、魏にとっては長安を守るための「最前線の城門」です。
そして、蜀にとっては街亭を押さえれば、補給路の確保ができ、長安への進軍がしやすくなります。
魏は洛陽(らくよう)にあります。
蜀から洛陽へ
簡単に言うと
成都(蜀の都)→街亭(蜀の補給線)→長安(魏の西方拠点)→洛陽(魏の都)
となります。
ですから、魏にとっても蜀にとっても、この一戦は運命の一戦だったのです。
「天水」はどこ?
ドラマ冒頭で「曹魏軍は天水を奪還」とあります。
魏の将軍:郭剛(かくごう)が天水が基盤だと言っています。
「天水」は長安の北西に位置し、蜀(成都)から北上すると、隴西・街亭と並んで、魏の防衛線なのです。
この天水が北伐で一時的に蜀に奪われたのです。
それが「街亭の戦い」で魏が勝利したことで、奪い返すことができたのです。
街亭の戦いで馬謖が敗れ、蜀軍は撤退を余儀なくされ、魏が天水を奪い返したのです。
いかがでしたでしょうか?
このドラマ、冒頭から馴染みのない地名が出てきてややこしいですよね。
少しでも「なるほど」と思っていただけたら嬉しいです。
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