中国ドラマ『美人骨』タイトルに隠された中国語の美しさ

中国ドラマ『美人骨』――ちょっと変わったタイトルだと思いませんでしたか?
原題は『周生如故』。日本でどう訳されるのか、気になっていました。
「美人骨」という言葉は、日本人には馴染みがないですよね。
“魂の美しさ”を描いたこの物語。中国ならではの美意識と静かな情熱が詰まっています。
今回はタイトルに込められた意味を解説していきます。
きっとこのドラマの魅力を再認識することができるでしょう。そして、中国語の魅力にも触れてみませんか。

原題「周生如故」の意味とは?

「周生如故(Zhōu shēng rú gù)」というタイトルは、字面だけで見ると一見難解ですが、実は詩的で深い情感が込められています。

周生:主人公・周生辰(しゅう・せいしん)の名前。

如故:「故(ふる)しの如し」、つまり「昔のように」「旧知のように」という意味。
 →「まるで昔から知っていたかのように親しい」「旧友のように懐かしい」

「周生辰と出会ったとき、まるで前から知っていたように心が通った」そんな意味があります。

中国では前半が「周生如故」後半は「一生一世」と別のドラマのタイトルです。

一生一世(yī shēng yī shì)とは、
「一生に一度」「一生涯にわたって」
という意味で、“永遠の愛”や“生涯をかけた想い”を表します。
このことを考えると、「周生如故」は前世からの縁が、変わらぬ想いのまま続いている、という魂の記憶や縁の継続といったことを意味していると思います。

とても素敵なタイトルですね。
中国ドラマが日本に上陸すると、「うーん?」というタイトルに変わっていて、残念の思う事が多々あります。
「美人骨」は決してドラマの内容から逸脱しているわけではありません。
でも日本人にはその意味は伝わりにくいと感じます。
では「美人骨」に込められた想いとは?

日本語タイトル『美人骨とは』?

日本語版タイトルの「美人骨」も、非常に詩的で中国的な概念を含んでいます。
中国古典文学などでは、「美人骨」は単なる外見的な美しさではなく、清らかで孤高な気質を持つ女性、あるいは内に美徳と高潔さを秘め存在を指す比喩的な表現として使われます。あるいは外見は地味であっても、骨の中に美が宿っているような人という意味でも使われます。

“美人骨,世间罕见” Měi rén gǔ, shì jiān hǎn jiàn.
(美人骨、この世にまれな存在)

つまり、「美人骨」とは、「美しく、誇り高く、でも儚い」そんな意味があるのです。
まさに、主人公の二人、周生辰と漼時宜にぴったりの言葉ですね。

ドラマの中では女将軍宏晓誉が、南辰王(周生辰)について、民の間で語り継がれている言葉として紹介しています。
では、その言葉を中国語と共に紹介していきます。

「美人骨,世间罕见……」その美しい言葉に秘められた意味

女将軍宏晓誉が周生辰や兵士たちの前で民の間で囁かれている言葉があると、静かに語り始めます。

美人骨,世间罕见。
Měi rén gǔ, shì jiān hǎn jiàn.
有骨者,而未有皮;有皮者,而未有骨。
Yǒu gǔ zhě, ér wèi yǒu pí; yǒu pí zhě, ér wèi yǒu gǔ.
世人大多眼孔浅显,只见皮相,未见骨相。
Shì rén dà duō yǎn kǒng qiǎn xiǎn, zhǐ jiàn pí xiàng, wèi jiàn gǔ xiàng.
而小南辰王,是世间唯一一个兼具骨相和皮相的人。
Ér Xiǎo Nán Chén Wáng, shì shì jiān wéi yī yí gè jiān jù gǔ xiàng hé pí xiàng de rén.

意味はこんな感じです。

美人骨,世间罕见。
→ 美しい骨を持つ人(=美人骨)は、この世ではめったに見られない。

有骨者,而未有皮;有皮者,而未有骨。
→ 骨(=内面の美)を持つ人は皮(=外見の美)を持たず、
 皮を持つ人は骨を持たない。

世人大多眼孔浅显,只见皮相,未见骨相。
→ 世間の人々の目は浅く、皮相(=外見)しか見えず、骨相(=内面の美)は見えない。

而小南辰王,是世间唯一一个兼具骨相和皮相的人。
→ けれど小南辰王(周生辰)は、この世で唯一、外見と内面の両方を兼ね備えた人だった。

「骨相」は骨格の美しさ:精神性や人間性の美しさ
「皮相」は外見の美しさ:うわべの姿
中国では「本質と表面」の対比として使われるようです。

この一節は、「美しさとは外見だけではなく、内面の強さ・気品・魂にある」というメッセージです。
そして小南辰王(周生辰)は、外見も内面も兼ね備えた「唯一無二の存在」であることが、美しく詩的に描かれています。

そして、実はこの「美人骨,世间罕见」という言葉は、ただ彼の美しさを称えるだけの賛辞ではなく――
「世にも稀な、心まで美しい存在は、この世界に長くとどまれないのかもしれない」という、どこか儚さと宿命のようなものを感じさせます。

この言葉が小南辰王の悲しい宿命を背負った人として、彼の最期を暗示しているのだと思います。
そして、この一節があることで、彼の死はただの悲劇ではなく、「美しさとは何か」を問いかける哲学的な意味合いすら帯びてくると思います。

あなたは“骨の美しさ”を信じますか?

「美人骨,世间罕见」――この言葉は、単なる称賛ではありません。
それは、志を貫き、美しく生きる者への祈りであり、哀しみの兆しでもあります。

周生辰という人物は、まさに“骨”に美を宿した人でした。
それを静かに、深く、そしてまっすぐに表現したのが、アレン・レン(任嘉伦)の演技です。

派手なアクションや大げさな感情表現はありません。
しかし、一つひとつの所作や沈黙にこそ、彼の想いが宿っている。
言葉少なにして、観る者の心をつかむ――それが、アレン・レンの演技のすごさだと感じます。

「骨の美しさ」は、目に見えないもの。
けれど確かに、心には残るのです。

ぜひ『美人骨』に込められた意味を感じながら、ドラマの世界を旅してください。
ただの「悲しいドラマ」では終わらない余韻が残るとともに、後半の現代劇の二人の「再会」に感動を覚えると思います。

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